薬剤師が教える抗酸化物質 「ビタミンE」について
ビタミンCと並んで、身近な抗酸化物質であるビタミンEは、様々な食材に含まれています。
幅広い範囲で活躍しているビタミンEの力について、様々な角度からご紹介させて頂いております。
ビタミンEの歴史
抗酸化物質としてよく知られているビタミンE。実は、もともと不妊治療に役立つ物質として発見されました。 ことの始まりは、アメリカの学者であるエバンスがラットを脱脂粉乳で飼育していた時に、そのラットが不妊になってしまったことでした。 この原因を調査しているときに、体内のある脂溶性の成分が不足すると卵子が精子と受精しても育たないことが判明しました。 この時点ではこの成分はエックスと命名され、レタスに含まれているということ以外はまだ分かっていませんでした。 1924年にこのエックスが脂溶性化合物であることがわかり、徐々にその正体が明らかになり、シュアという人によってビタミンEと名付けられます。 その後も研究が進められ、今ではそのアンチエイジング効果に注目が集まり、美容業界やエステなどでも利用されています。
ビタミンEの作用
私たちの体の細胞を保護している細胞膜には不飽和脂肪酸という物質が含まれていますが、この物質は酸化されやすいという欠点があります。 体内で産生される活性酸素がこの不飽和脂肪酸と結合すると、過酸化脂質という物質に変化し、これが細胞の寿命を短くしたり突然変異で異常な細胞を作って病気の原因となったりするのです。 ビタミンEにはこの活性酸素を中和する働きがあるため、健康な細胞を維持することができるのです。 また、ビタミンEによる活性酸素の中和によって皮膚の酸化が抑えられ、シミやくすみを減らす作用もあります。 他に、血液の酸化を抑えることで血管の内壁を健康に保ち、血行を良くして動脈硬化を予防し、脳卒中や心臓病、高血圧といった成人病の予防にも役立ちます。 さらに、もともと不妊治療のために発見されたビタミンEには、性ホルモンの生成を助け、生殖機能を守る作用もあります。 更年期のホルモンバランスの乱れも、ビタミンEを十分に摂取しているとやわらげることができると言われています。
ビタミンEが多く含まれる食物
ビタミンEはひまわり油やマーガリン、菜種油などの油脂類やアーモンド、落花生などの種実類、煎茶や抹茶などのお茶類、うなぎやたらこ、いくらなどの魚類、カボチャやモロヘイヤ、ほうれん草、アボカドなどの野菜類に多く含まれています。 ビタミンEはこのように様々な食材に含まれていますから、バランスの良い食事を心がけていれば不足することはほとんどありません。 ただ、古くなった油には過酸化脂質が多く含まれますから一度使った油はできるだけ使わないようにしましょう。揚げ物に使った油は再利用しがちですが、これにより細胞膜を傷つけ体調を崩してしまうこともあります。