ワキガなどの体臭は人にうつるの?
よく風邪がうつる、なんてことを言いますが体臭もうつったりすることがあるのでしょうか。
風邪の原因は菌です。
体臭も皮膚常在菌が汗などを分解することで発生します。
それでは体臭のある人の菌が体臭のない人についたら、その体臭がうつってしまうのでしょうか。
「ワキガはうつる」という話が最近巷で広がっているそうです。
ワキガの人が着ていた服を借りて着るとワキガがうつるとか、ワキガの人が使ったタオルを借りて使うとワキガ体質になる、といったものです。
こういった話が中高生の間で広まって、ワキガという言葉がいじめの対象にもなっているそうです。
しかし、これは完全に間違った話です。
体臭がうつることはありません。
ニオイとは?
ニオイというのはガス状の気体です。
空中を浮遊しているニオイ物質が鼻に入ると、その信号が脳に伝達されることでニオイを感じるのです。
ニオイ物質でないものが鼻に入っても臭いを感じることはありません。
体臭もそのニオイ物質の一種です。
人間が感知できるニオイ物質は数十万種類あるのだそうです。
他人の体臭は、その人の体や衣服で繁殖する細菌が出すニオイ物質です。
このニオイ物質が空中に飛び出して自分の鼻に入ると臭いと感じることになります。
また、ニオイ物質が自分の衣類に付着すると他人のニオイが移ったということになるでしょう。
ただ、これは他人が吸ったタバコのニオイが衣服に付くようなもので、原因までうつるわけではありませんから、あくまで一時的にニオイがついただけです。
ワキガの原因は?
ワキガはわきの下のアポクリン腺から分泌される汗に含まれる脂質やたんぱく質、ステロイドなどのニオイ物質が皮膚常在菌によって分解され、腐敗発酵されることで発生します。
アポクリン腺は数の違いこそあるものの、誰にでも存在するものです。
しかし、ワキガの人とそうでない人がいるのは、皮膚常在菌が違うからです。
ワキガでない人の常在菌は表皮ブドウ球菌が多いのですが、ワキガの人はジフテロイド菌という菌が多いのだそうです。
表皮ブドウ球菌が分解したニオイ物質は酢酸が多く汗臭いニオイになりますが、ジフテロイド菌が分解したニオイ物質には刺激的なワキガ臭となる成分が多く検出されるのです。
ワキガはうつる?
つまり、ワキガはアポクリン腺の数などにも影響されますが、皮膚常在菌の種類によっても発生するかしないかが変わってくるのです。
では、この常在菌が衣類の貸し借りによって移動するとワキガがうつるのでしょうか。
確かに、ワキガの人の分泌した汗やジフテロイド菌が衣類を介して「移動」することはあるでしょう。
そのため、一時的に衣類を借りた側にニオイが移ることはあり得ます。
しかし、ジフテロイド菌はワキガ臭の原因となる特定の脂肪酸が分泌されないと生きていけません。
ですから、ワキガの人から衣類を借りた人の体にワキガの原因菌が永続的に棲みつくことはできないのです。
つまり、衣類の貸し借りなどで体臭がうつるということはありえません。
一時的に臭いが移ったとしても、時間が経てば消えてしまいます。
体臭はうつったりしないということがお分かりいただけたでしょうか。
体臭は遺伝によって継承されることはありますが、AさんからBさんに個人的にうつるということはありません。
体臭は、生まれ持ったものや生活習慣、特定の病気などによって引き起こされるもので、衣類の貸し借りなどの外的要因によってうつったりはしません。
しかし、それを誤解してワキガの人に対するいじめや、仲の良かった友達との人間関係がぎくしゃくしてしまうようなことが起こっているのです。
ワキガはうつりませんし、治療することも可能ですから、ワキガの人も責任を感じたり劣等感を持ったりする必要はありません。